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第57号 2015年/10月号

北海道・十勝岳での傾斜計設置

写真:十勝岳登山口より 昨夏、約5年ぶりに活火山における傾斜計設置の補助業務を実施いたしましたので、ご報告いたします。
 傾斜計は、活発に活動する活火山に設置することで、マグマ活動や噴火などに伴う山の膨張や伸縮を捉えることができ、火山噴火のメカニズム解明、噴火予知など、火山学に関する様々な研究に役立てられます。
 今回の業務は、国立大学法人よりご発注いただいたもので、北海道美瑛町に位置する十勝岳にて傾斜計挿入孔の掘削、設置補助を行ってきました。
 美瑛町は映画「北の国から」で有名な富良野の町に近く、冬場は多くの雪が降ります。十勝岳は標高2,000m超の綺麗な山であり、雪解け後は多くの登山客でにぎわいます。夏場であっても山には雪が残っており、中にはスキー板を担いだ登山客もいるほどです。
 火山としての十勝岳は警戒レベル1であり、1989年の活動(火砕流流下)以降、現在まで比較的落ち着いた状態を保っています。
 ただし、20世紀だけでも3度のマグマ噴火を起こしており、1926年の大正噴火では100名以上の犠牲者を出しています。記憶に新しい御嶽山のような例(噴火前はレベル1)もあることから、防災上非常に重要な火山と言えます。

 今回の業務では、作業性や運搬状況から、一昨年度にNETIS登録を果たした小型ボーリング機(Quick Boring)を使用し、孔径は鹿児島県の諏訪瀬島で設置した傾斜計と同じ116mm、深度は3倍の12mを掘削しました。深度が深くなった理由としては、現場は山腹の緩斜面であり、土石流堆積物などの未固結層が厚く堆積していたことが挙げられます。傾斜計は緩い地盤等に設置した場合、火山活動と無関係な局所的な変動などを拾ってしまう可能性があり、強固な岩盤などに定着させる必要があるためです。
 掘削の段階では、孔が崩れやすく、困難を極めました。本来はケーシング(孔の保護管)が必要な緩い砂礫地盤にも関わらず、ケーシング挿入が困難であったためです。しかしそこは、熟練のボーリング技術者。孔を壊さないように工夫して掘り進め、何とか溶岩層(岩盤)までたどり着きました。

写真:掘進作業状況 続いては、傾斜計を納めるためのケーシング建て込み作業です。しかしここで、新たな問題が発生しました。ケーシングの外側をセメントなどで充填し固定する必要があるのですが、地盤に空隙が多すぎて、セメントがどんどん流出してしまうのです。水セメント比を変えるなどを試みましたが、流出は止まらず、最終的には大きな空隙のみを砂で埋めるなどして、何とか固定することができました。しかし全体をセメントで固定することができなかったため、不安を残す結果となりました。
 このため、観測開始後に発注者の先生より、「良いデータがとれている」とご連絡をいただいた時は、胸をなでおろす思いでした。

 最近では御嶽山や阿蘇山、また今年夏頃には、一時桜島も噴火レベルが上がるなど火山活動が活発化しています。今年度も既に、国立大学法人より同様の業務発注を頂きました。他にも2件ほど受注を予定しています。
 今後も当分野はもとより、様々な分野のニーズに対応できるよう、技術力の向上に取り組んで参りたいと思います。

現場からの眺め

(架空送電技術部)

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