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第45号 2010年/10月号

地下水を考慮した斜面対策について

 「水を制するものは天下を制す」これは中国のことわざです。水は人間に大切なものであることは論を待ちませんが、大量の降雨等は人間にとって大きな災いをもたらします。このため、水と関わらずに生きていくことのできない人間にとって、治水・利水は最重要項目の一つと言えるでしょう。

 土木分野では、河川工学・上下水道工学・ダム工学など直接的に水を扱う分野もありますが、コンクリート工学や土質工学など水を間接的に扱う分野もあります。この「間接的に扱われる水」は強度や施工性などに大きな影響を与えます。コンクリート工学では、水とセメントの割合が出来上がるコンクリートの強度や流動性に大きく関わりますし、土質工学の分野では土中に分布する地下水が土の重量や強度に大きな影響を与えます。また、建設工事では、必ず根切りや掘削工事を行う必要がありますが、日本では地質土質が複雑で地下水位が高い所が多く、工事を安全・確実にまた経済的に行うためには、地下水についての対策が最大の課題であるといっても過言ではありません。

写真1:崩壊箇所状況 写真2:崩壊面に現れた水みち 近年、九州地方では異常気象とは言えないほど、毎年のように大雨による被害を受けています。台風襲来に伴う大雨や、地球温暖化が原因と考えられるゲリラ豪雨が多発する傾向にあります。
 送電線鉄塔においても、豪雨により鉄塔基礎に及ぶ斜面崩壊の発生が増加しています〔写真(1)〕。これらの崩壊原因を調査すると、崩壊箇所の多くは浅い谷状斜面を呈し、まさ土のような地下水が浸透しやすい地盤であることがわかります。また、崩壊面を観察すると写真(2)のようなパイプ状の水みちが発見されます。このような崩壊は、地下水が水みちに蓄えられ、地盤全体の重量が増加するのに対し、地中の間隙水圧上昇に伴うせん断抵抗力が低下することによって発生したものと考えられます。

 ここで、対策工背面の地下水に着目した、のり面じゃかご工と擁壁工について説明します。
 のり面じゃかご工は湧水があって土砂が流出するおそれのある場合、または崩壊した箇所を復旧する場合などに用います。

写真:のり面じゃかご工 じゃかごには普通のじゃかごとふとんかごとがあり、普通じゃかごは主としてのり面表層部の湧水処理、表面排水などに用いられます。ふとんかごは湧水箇所や地すべり地帯における崩壊後の復旧対策に用いられ、多くの場合、のり面工というよりむしろ土留用として使用されています。

 擁壁工では、擁壁背面の水抜きが重要となります。水抜き孔などが不足する場合、背面土圧に加えて水圧が作用し、擁壁がはらみ出したり、亀裂を生じたりすることがあります。
 このため、擁壁工では背面の地下水を効率よく排水することが肝要であり、井桁組擁壁などの高い排水性能を有する擁壁が採用されています。

 写真:井桁組擁壁土質工学の分野においては、近年、地下水に関する知識・経験が次第に豊富になり、適正に工事に反映させることが可能になってきています。さらに新しい工法や技術の高度化を図るための新しい試みもいろいろ実施され、技術の発展もめざましいものがあります。
 実務技術者は、地下水の作用や影響などについて十分な技術的知識を持ち、経験を積み、土砂災害に適正に対応していかなければなりません。

(電力技術部 橋本次長)

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