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第44号 2010年/6月号

電線寿命推定マップの作成

図:北西風の海塩粒子拡散 全国的に高経年化による設備の劣化が問題となってきており、各分野で設備の保全管理について様々な取り組みがなされています。そんな中、九州電力(株)殿では、今後ますます増えていく高経年架空送電線の張替えをより効率的に計画する為、これまで行ってきた電線劣化診断試験のデータを元に、経年や離岸距離(塩害程度)に着目して九州での電線腐食傾向の解析を当社に依頼されました。

海塩粒子拡散マップ その結果、実際の電線腐食は、経年や離岸距離だけでは表現できない、地域的かつ地形的要因が深く関わっていること、また大気の湿度も把握する必要があることが分かりました。その為、気流解析と物質拡散解析およびGISの技術を利用して管内の腐食環境マップを作成し、電線の寿命推定に活かす検討を行いました。
 まず、電線腐食のほとんどを支配する飛来海塩とぬれ時間(金属表面の湿潤時間)のGISデータ化を行いました。ぬれ時間については、株式会社 工学気象研究所殿での解析結果をGISデータに変換し、ぬれ時間マップを作成しました。

海塩粒子拡散マップ 海塩粒子拡散解析については、財団法人電力中央研究所殿が開発されたNUWICC-STソフトを利用し、弊社で各種パラメータを検討後、数値解析を行いました。その結果を風向・風速・風速出現頻度などの要素において補正を加え、最終的な九州の海塩粒子拡散マップを作成しました。

 次に、ぬれ時間と海塩粒子拡散解析マップの2つの腐食環境要因マップ値と、目的となる寿命データとの関係を線形重回帰分析で求めました。

図:線形重回帰分析

  この結果、電線の寿命と先に示した2つの腐食環境要因との相関性が認められたことから、この相関式に従って海塩粒子拡散マップとぬれ時間マップとを合成し、九州地区の電線の寿命を推定する「電線寿命推定マップ」を完成させました。
 このマップによって、これまで九州全域での電線張替優先度の評価が困難であった、地域および地形的要因の判断指標として、計画検討の実現と効率化が期待されています。
 この様なマップ作成の技術はまだまだ発展途上であり、今後の検証・研究によってより実務に役立つものと期待されます。

図:電線寿命推定 また、一度作成された環境因子マップは目的(今回は電線寿命)が限られる事はなく、大気環境に関わるものであれば利活用可能なものである為、今後、大気中に曝されている設備に関しても、今回の様な設備保全管理に役立つよう検討を進めていきたいと思っています。

(電力技術部 井本主任)

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