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第39号 2008年/10月号

電線腐食とその調整方法

 突然ですが、会社には手作り弁当を持参していますか?
 中には、何十年と弁当を持ってきている方もいると思います。お弁当箱がアルミ製という方、こういう経験はないでしょうか?「弁当箱のフタが腐食してきた・・・」
 最近は、アルミ製の弁当箱も少なくなってきましたが、昔は、弁当に梅干などが入っているとフタのその部分だけ、アルミが腐食してきたという話がありました。
 この腐食は、実は現在架線してある電線(ACSR線など)のアルミ素線でも起きているのです。
 一般的に、アルミは、酸化しやすい(腐食しやすい)金属です。アルミが空気に触れると、その表面に「酸化皮膜」という膜をつくります。酸化皮膜は、バリヤーみたいな働きをし、膜の内部のアルミを腐食(酸化)しないように守ってくれます。
 ・・・と、ここだけ読むと、ACSR線などで使用しているアルミ素線は「酸化皮膜が守ってくれるので、腐食しないんだな〜。よかった。」となりますが、そううまくはいかないようです。
 アルミの酸化皮膜は、とても薄く、塩化物イオンなどによって破られます。また、一旦破られると、その破壊点を起点として、局部的に腐食が進行する「孔食」と呼ばれる腐食を起こしてしまうのです。

アルミ腐食イメージ図

 ACSR線などの腐食は、先ほどの孔食に加え、異種金属接触腐食も関係しています。異種金属接触腐食とは、腐食電位に差のある2種類の金属が電解溶液中で接触していると、腐食電位の卑な(低い)金属が腐食し、貴な(高い)金属が防食される現象を言います。
 ACSR線の場合、亜鉛めっき鋼線の周りにアルミ素線が接しています。そのため、塩分を含む水が電線内部に浸入すると亜鉛とアルミの異種金属接触腐食が起こり、腐食電位の低い亜鉛が腐食により消失します。すると、次に鋼とアルミが接触することになり、今度は、腐食電位が低い方のアルミ素線が腐食を起こしてしまいます。

電線断面写真

 このような腐食が起きた場合、鋼線と内層アルミ線の間に水酸化アルミニウムを主成分とする腐食生成物が発生するため、徐々に内層・外層アルミ素線が押し上げられ、より線の電線外径が増加していきます。このように内部から腐食してくるため、電線外観のみを観察しても腐食しているか良く分からず、見逃してしまうことも多々あるようです。
 また、腐食が進行すると、一部分が膨れた形状となり、最悪の場合には断線も起こりかねない危険な状態となります。
 そこで、当社と(株)ジェイ・パワーシステムズ殿が協同で行っている電線腐食点検として、「電線外径カメラ点検」があります。
 これは、望遠レンズを備えたビデオカメラで、電線を地上から撮影し、その撮影画像を解析して、電線外径の僅かな変化を把握する点検方法です。この方法により、外観の目視点検では発見が難しい内部腐食の兆候を把握することができます。

電線外径カメラ点検イメージ写真

 この点検方法には、次に示すような多くの利点があります。
  1. 地上より電線を撮影するため、線路停止や塔上作業を必要としない。
  2. 電線を1条ずつ撮影し、その動画を解析するため、一度撮影すれば、何度も確認でき、腐食の見逃しが少ない。
  3. 電線腐食に詳しい経験者が解析・まとめを行うため、腐食の見逃しが少ない。
 ただ、あまり言いたくはありませんが、欠点もあります・・・。
  1. 撮影する電線が樹木の陰に隠れて地上からは見えない場合や、撮影位置から電線までの距離が150m以上離れている場合は、撮影・解析が困難となる。
  2. フィールドスコープなどを用いて人が点検する方法に比べて、点検費は割高である。

 これらの欠点はあるものの、「電線外径カメラ点検」は、停止作業を行わず、電線外観からは分かりにくい腐食を発見できる点検方法として、かなり有効であると思います。
 また当社では、撤去された電線の強度試験も行っており、それらのデータの蓄積によって相互の調査結果報告に反映することも可能となってきました。

電線解体写真

 現在、この電線外径カメラ点検は、九州電力(株)殿より多数付託いただいております。これからも、腐食の進行が懸念される海岸部に近い電線を中心に、この点検を行っていきたいと考えております。

(電力技術部 堀本主任)

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