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第39号 2008年/10月号

「くい基礎の沈下」〜調査計画と探査結果〜

磁気探査の有用性

 今回ご紹介するのは、顧客から舞い込んだ「特殊な状況に陥った構造物」のお話です。
 『くいを打設した構造物に不同沈下が発生してしまった。やや古い構造物で、くいの種類・工法・長さに関しては漫画的な絵しか残っておらず、地盤調査データや詳細な設計資料は無い。原因は? 対策は?』
 これに応じて地表踏査を行ったのですが、地形・地質・環境等の状況から、沈下の発生原因を推定するに十分な間接的情報を掴むことができました。
 まずは、地形地質。下図に示すように、構造物は水田内に建っているのですが、その両側から延びた基盤岩の山の潜り込みが、沈下していない側で浅く、沈んでいる側に深い可能性があることが認められました。

 次に環境。構造物の近所には古い民家があり、くい工法は打撃では無いと推定されました。さらに、構造物の建設時期ならびに残された「基礎の漫画絵」をみると、時期が昭和50年初頭くい長が7〜8m程度とあり、PCくいを使用した可能性が高いと考えられたのです。

構造物周辺の地形・環境 見取り図

 つまり、地表踏査を終えた時点で推定された沈下の原因は、 「何らかの地盤調査を行った後、設計段階で支持層深度を均一化、PCくいを打撃工法以外の工法で打設。設計深度付近で止め、支持力の確認を確実に行わぬまま工事を終えた・・・。」となります。

 さて、推定通りの状況であるかの検証です。
 基盤岩(くい支持層)の深度についてはボーリング調査を行いましたが、構造物範囲内のくい支持層を3次元的な広がりで掴むためには、ボーリングだけでは経費が嵩張ります。そこで、大型自動貫入試験を併用することにしました。
 結果は、左図のように浅い箇所では6m程、深い箇所では14m程と、基盤岩深度が敷地内で大きく斜め方向に変化していることが判明したのです。

くい支持層上面の等深線図

 次に、くい長の確認です。
 これは、「PCくいであれば鉄筋が入っており、その残留磁気強度を探査すれば確認できる。」と判断しました。しかしながら、古い構造物であるので、金属を含まない「くい」である場合も想定し、土中の異物であれば概略形状を把握できる「速度検層」も併用することにしました。

「磁気探査の概要」 “くい”の近傍にボーリング孔を設置し、この孔に磁気検層ゾンデを挿入、降下させながら連続的に磁気計測を行い、残留磁気反応をみて、くいの深度を判定する。この方法は、金属を含む“くい”のみに適用できるため用途は限定されるが、基礎体が地上に出ていなくとも調査が可能。
磁気探査結果(上)と観測機器(右)

 磁気探査結果の一つを上に示します。残留磁気を見事に検出し、地山と金属物質(くい)の境界深度を掴むことに成功しています。
 この結果、相対的な沈下が無い側の「くい」は支持層に到達しているものの、沈下している側の「くい」は約5m根入れが不足し、その先端は、軟弱粘土中の緩い砂の薄層に定着させていることが分かりました。速度検層結果は磁気探査ほどシャープではありませんが、これを追随するデータを与えています。
 悪い現象には必ず原因があり、これを「何か」が、直接・間接的に表しています。その状況を洩らさず掴み、原因究明に向けた最善策を顧客に提案することが我々の役割といえるでしょう。

(環境調査部 小西次長)

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