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第32号 2006年/6月号

小型ボーリング機による不攪乱資料採取法

 送電鉄塔における基礎の適用技法と判定においては、応用地質学的見地に立った時、「表層の風化した地質に支持層を求める。」という点で、他の多くの大型土木構造物とは異にし、「地質風化物の詳細分析が必要な分野」といえます。
  鉄塔の基礎設計や標準基礎の適用検討を行う場合には、地盤調査時の強度試験結果や既往データを分析・整理して用いていますが、これまで強度試験を行ってきた試料は、軟らか過ぎる土(N値=10以下の低い領域)にデータが集中し、基礎の支持層として評価が分かれるN値=15〜40の領域の試験結果が少ないのが現状です。
 この状況は、土質強度試験用の試料採取に際し、硬軟入り乱れた土や、硬い土などの「乱さない試料」の採取が困難であることに起因していますが、このテーマは、地盤調査業界において、永く命題として残されている問題といえます。また、幾らかの地質においては、風化状況が不均質であるため強度試験が行われておらず、データが殆ど無いことも事実です。
 つまり、今後の基礎設計に対応するには、地盤定数の推定精度の向上は当然として、これまでに採取できなかった試料の採取も必須であるのです。
 これらの背景を元に、この度、当社で開発した「小型ボーリング機(Quick-Boring)」を用いて、不均質な地盤の乱さない試料の採取を試みました。今回は、その結果を報告します。

小型ボーリング作業状況写真 「小型ボーリング機」については、こちらで概要を紹介しています。本機最大の特徴は、「掘削機本体に高速回転の電動モーターを使用し、土の組織を圧力で粉砕することなく粒を切ることで、良質な試料を採取する」ことにあります。
 汎用のボーリング機は、エンジンの回転を利用しているため、回転数が最高でも150回転/分であるのに対して、「小型ボーリング機」は、電動モーターによる回転を利用し、最高で1300回転/分と高回転の掘進が可能となっています(回転速度は三段階の切り替えが可能)。
 この高回転掘進により、土を切りながら採取できるため、良質な試料の採取が可能となったのです。

凝灰角礫岩における硬軟部試料採取状況写真 これまで、小型ボーリング機を用いて採取した試料は、非常にきれいで、良質な状態で採取されていたことから、三軸圧縮試験などの室内土質試験試料と成り得るとは考えていました。
 今回、試料採取の対象とした地質は凝灰角礫岩です。この凝灰角礫岩は、火山噴火により噴出した礫や火山灰が堆積して固結したもので、硬質礫と粘性〜砂質土が混在した不均質な地層の代表といえる地層です。
 このように硬軟が混在する土の採取は非常に難しいのですが、今回、極めて良質な試料採取に成功しました(右写真)。

不攪乱試料採取用のコアサンプラ−の写真 この不攪乱試料採取を行うにあたっては、左の三重管サンプラーを使用しています。
 このサンプラーの中には、透明なアクリル管が内蔵でき、このアクリル管の中に採取した試料が入ってきます。

三軸圧縮試験前後の供試体の写真 試料は全部で8本を採取し、このうち7本の試料で、三軸圧縮試験が実施できています。
 今回の成果は、「これまでに室内試験の実施が困難であった不均質な地質(地層)において、比較的容易に、強度試験用の供試体を採取する方法を検証できた。」と、位置付けることができると思います。
 今後、この試料採取法を用いた山岳表層の風化層における強度試験が数多く実施され、今なお、強度の推定が不鮮明な地質における設計地盤定数を整備していくことが期待されます。

(環境調査部 小西課長、兼国係長、藤井主任)

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